月虹製作の10年 〜わたしたちの社会的存在意義〜

10周年という節目で、経営者であるわたしにとってなにか特別な感慨があったかというと、正直なところ、あまりないというのが本音です。2年前に作ってもらったロゴも、Webサイトのリニューアルも、この10周年という節目で袖をまくったわけでもなく、それでもなんとなく節目だからと、周りを巻き込みながらなんとか形にすることができたものです。リニューアル前のバタバタは、大したこだわりがあるわけでもないのにたまに形式にこだわると周りに迷惑をかける典型例であったと反省しています。数年前にロゴを作ってくれたSKGさんと、そのロゴを活用し、当社の理念をきちんと理解、継承しながらWebデザインと開発をしてくれた社員のYとKにはとても感謝しています。ただわたしは、10年やってきたことに誇りがないわけでも、記念を軽視しているわけでもありません。日々の困難を淡々と乗り越えてきた実感のほうが強く、振り返ればいつも「なんとか10年続けてこられた」という思いばかりが浮かび上がります。

だからこそ10周年を迎えた2024年9月には、当社の10年を設立前から1年ずつ振り返るために、わたしは数十ページの資料を作り、社員たちに会社の歴史を説明しました。
設立前の出来事を書いているときでさえ吐き気を感じたうえに、それを社員の前で読み上げたときには、一度過去に戻ってすべてやり直せたら、とさえ感じました。設立以降のほとんどの出来事は、社員の大半が共有してくれているとはいえ、わたしから改めて乗り越えてきた困難を振り返ると共に、全員で「誇り」を共有する瞬間が多く、わたしたちの強さは今この場で10年という小さな歴史を振り返っている「すべての社員」によるものであることを実感しました。


なんだ、ちゃんと10周年をしているじゃないか、と自分に感心する一方で、記念品とかノベルティとか、顧客への手紙であるとか、わたしが口走ったほとんどのことを実行しないまま、月虹製作は10周年を迎え今に至るのですが、ひょっとすると、イベントが好きな社員が隠れているかもしれないという恐れから、10周年特別休暇という名のもとにGW16連休にするという、10周年とは全く関係のないイベントをわたしが発案して実行しました。 社員が喜んでくれたのはとても良かったのですが、周年という謎の口実でなんでもできてしまうという事例をつくってしまったことは、今後のリスクとして捉えておいたほうが良いかもしれません。

会社設立後半年経過 2015年3月の安形 お客さんに覚えてもらうようにロン毛にする。3年後に40歳を迎え、髪を切った時は社内外が驚いたほどロン毛キャラが定着していた
会社設立後半年経過 2015年3月の安形 お客さんに覚えてもらうようにロン毛にする。3年後に40歳を迎え、髪を切った時は社内外が驚いたほどロン毛キャラが定着していた
10周年を迎えた2024年11月の安形 小さな字が読めずに老眼鏡は常に手元に。10年の間に結婚し、髪は短くなり、体重と白髪が増え、すっかりアラフィフになった
10周年を迎えた2024年11月の安形 小さな字が読めずに老眼鏡は常に手元に。10年の間に結婚し、髪は短くなり、体重と白髪が増え、すっかりアラフィフになった
2014年8月頃、会社設立前の準備期間、社名が全部漢字にならないように試行錯誤したが結局、すべて漢字の社名に。この頃は本当に気持ちがすさんでいた。少しでも希望が持てる社名にしたかった。
2014年8月頃、会社設立前の準備期間、社名が全部漢字にならないように試行錯誤したが結局、すべて漢字の社名に。この頃は本当に気持ちがすさんでいた。少しでも希望が持てる社名にしたかった。
2024年9月の10期決算月の反省会で10年を振り返る。あまりにも長い資料で振り返るのも読むのも大変だった。会社設立背景に対する最初で最後の振り返り。この場所にいた全社員に感謝し、今後の当社の話もした
2024年9月の10期決算月の反省会で10年を振り返る。あまりにも長い資料で振り返るのも読むのも大変だった。会社設立背景に対する最初で最後の振り返り。この場所にいた全社員に感謝し、今後の当社の話もした

さて、もう少し辛抱強く真面目に10周年として残す記事を書きたいと思います。

会社を立ち上げる前、知人に言われた言葉を今でも覚えています。

「3年続いて、たとえ倒産したとしても、誰も責めやしないよ」

若かった当時の自分には、その言葉が妙に腹立たしかった。なぜ最初から“倒産”の話をするのか。なぜ“誰も責めない”という他人の勝手の話になるのか。腹立たしいというより、むしろ悔しかった。ただ、いま思えば、その言葉のなかには、事業という営みがいかに不確かで、他人の理解の外にあるものなのかという現実が含まれていたのだと考えられます。たとえそれが、わたしに対する侮辱や嫌味の言葉であったのだとしても、いまのわたしにはそう思えます。

社員の気持ちの移り変わり、体調や家族の都合、人生の大きなイベント、取引先との摩擦、予期しないトラブル、わたしたちが長年支えてきた仕事に価値を認めてもらえなかったこと、そして何より、積み重ねてきた信頼が、わずかな意思のすれ違いですべて失われるという、あまりにも無力な瞬間。その誤解を解かないという悔しい決断。それでも、そのすべてを受け入れながら「まだできる」と思い直してきた10年だったように感じます。

 

月虹製作がここまでやってこられたのは、間違いなく「自分たちの仕事は、誰のために、なんのためにあるのか」という問いを、何度も何度も繰り返してきたからだと思います。そのことについて、わたしは社員たちと何度も繰り返し話をしました。顧客との長い電話を終えたあとで、深夜にトラブル対応を終えた社員を自宅まで送っていく車のなかで、おいしいはずの定食屋のランチの味が全くしなかったあとで、会議で、定期面談で、ガストで、神社で、帰り道で、Slackで、電話で。

それは売上や利益の話でも、わたしたちの作ったWebサイトやシステムの質でも、わたしたちが考えた仕様の精度や正確さでもなく、「わたしたちの仕事が信頼されるかどうか」「わたしたちの仕事が必要とされるかどうか」というもっと根源的な手触りを求め続けてきた営みだったのかもしれません。

わたしたちの仕事の多くは、表に名前が出るようなものではありません。社名が刻まれることも、目立った受賞歴があるわけでもありません。顧客のビジネスの成功に携わった身として大々的にPRするわけでもない。
それでもわたしたちは、誰かの仕事が少しだけ楽になって早く帰宅できたり、誰かの判断が少しだけ早くなって悩む時間が少なくなり、誰かの暮らしが少しだけ豊かになったり、そんな小さなちいさな「良い変化」の積み重ねを、そっと静かに支えていきたいのだと思います。夜空にかかる虹は人を幸せにするけれど、それを見る人は少ないように。

月虹製作の社会的存在意義は、誰かに与えられるものではなく、わたしたちが問い直しながら、少しずつ見つけていくものなのだと確信した10周年でありました。これからの10年も、きっとまた不確かで、報われることばかりではないでしょう。それでも、依頼される仕事があること、一緒に働く仲間がいること、わたしたちの仕事に期待してくれる顧客がいること、それら一つひとつの現実を、丁寧に受け止めながら、進んでいけたらと思っています。

これまで月虹製作に関わってくださったすべての皆さまへ、心より感謝申し上げます。
これからも月虹製作を宜しくお願い致します。

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月虹製作 代表取締役社長 安形